ピルと血栓症
低用量ピルは避妊だけじゃなく、月経周期の安定、月経痛の軽減などにも効果がありますが、ピルの副作用、血栓症が話題になっています。
ピルは多くの血液凝固・線溶系因子の血中濃度を変化させることが知られており、低用量ピル内服によって3~4倍程度血栓症発現頻度が増加すると考えられています。
血栓症は静脈血栓・塞栓症と動脈血栓症とに分けることができます。前者は深部静脈血栓,肺塞栓の原因となり,後者は心筋梗塞,脳卒中の原因となります。
ピルと血栓症に関するリスクとして、動脈血栓症では喫煙,高血圧,糖尿病,加齢が,また,静脈血栓症では加齢,肥満,最近の手術,血栓性素因が,それぞれ主なリスクファクターとなりえます。
ピルと心筋梗塞
・ピル服用中の高血圧症のある女性では,高血圧症のない女性と比較して少なくとも3 倍のリスクがあります。
・大量喫煙者では,ピル服用によりリスクの上昇が10倍に達する可能性があります。
ピルと脳卒中
1.虚血性脳卒中(脳梗塞)
・喫煙,高血圧のない女性ではピル服用により約1.5 倍リスクが上昇します。
・ピル服用中の高血圧症のある女性では,高血圧症のない女性と比較して少なくとも3倍のリスクがあると考えられます。
・喫煙のみのリスクが1.5~2倍であるのに対し,ピル服用中の喫煙女性では2~3倍のリスクとなります。
2.出血性脳卒中(脳出血)
・35 歳未満,非喫煙者,高血圧のない女性ではリスクは上昇しません。
・ピル服用中の高血圧 症のある女性は,高血圧症のない女性と比較して10倍のリスクをもつ可能性があります。
・喫煙女性では非喫煙女性の2倍以下のリス クと考えられるが,ピル服用喫煙女性では約3倍となります。
ピルと静脈血栓症
・ピル服用者では3~6倍のリスクがあります。
・リスクは服用開始後1年以内で最も高く,徐々に減少するが,中止するまで持続すると考えられます。
・中止後はすみやかに非服用者と同じリスクとなります。
ピルに含まれるエストロゲンの量が多いほど血栓症を起こしやすくなります。